2009年08月15日

「プロビンチア」と「エレベーター」

 2009年7月発行の山形県企業スポーツ振興協議会会報「CSP+」15号第一面に、社団法人山形県スポーツ振興21世紀協会(モンテディオ山形の運営母体)の理事長である海保宣生氏が寄稿した「『モンテディオ山形のJ1昇格』について」という文章が掲載されている。

 そこで、かれは、この9月に公表される予定であるところの2008年度のJリーグ各クラブの経営内容について言及し、「前年の実績から推定すると、モンテディオの2008年度の事業規模(総支出額)は73千万円でJ2(15チーム)中9番目であると思われる」と述べている。
 また、「総支出額の45〜50%が人件費であるが、このような財政環境でJ1進出を果たしたのは“大変な出来事”である」として、その「必然と偶然」について記している。
 なお、「必然」とは、小林伸二監督の招聘をはじめ、中井川茂敏GMらによる「適格(ママ)なチーム編成」。「偶然」とは、モンテが勝てずに苦しんでいるとき、昇格を争っていた湘南や仙台なども勝星を重ねられず、しかも昇格争いにおいて決定的な試合で、湘南からラッキーな勝利を得たことである。







 ところで、季刊『サッカー批評』43号(2009年6月)は、「プロビンチアの生きる道」という特集を組んでいる。(プロビンチアとは、地方の中小クラブのこと。)
 その特集中の記事「モンテディオ山形の躍進は『夢物語』なのか」(後藤勝)で、海保氏へのインタビューが紹介されている。

 「今年の予算編成会議では、身の丈を違えるようなお金の使い方は絶対にしない、と言いました。今季の収入見込みは10億3,400万円、そのうち5億1,000万円しか使わないと。(中略)でも、健全経営は違えない。そこからは絶対に軸足をぶらさない。もうひとつ、我々は公益法人であるから、サッカーという競技を通じ、人間として選手を育成することを目的として、ユースアカデミーを運営する、とも言いました。そのうえでプロとして活躍する選手が出現するのが望ましい、と。その基本原則を守った結果として、刀折れ矢尽きてJ2に降格してもいい。そうしたらまたJ1を目指せばいいじゃないか、というのが我々の考えです。」

 「エレベーターと言われてもけっこう。減資に追い込まれたJ2クラブは、みんなJ1経験者です。その轍は踏みません。」
 (引用者注:「エレベーター」というのは、J1に定着できなくて、J1とJ2を行ったり来たりするクラブのこと。)

 さて、今季、モンテディオ山形の事業規模は、間違いなくJ1でダントツ(ダンヘコと言うべきか?)の最下位だろう。
 このような弱小クラブがJ1に残留できるとしたら、それはたしかに“大変な出来事”―J1に昇格するよりも遥かに“大変な”―である。
 じぶんは、いま、この浪漫を追求しているモンテとそのサポーターたちを見られることに幸いを感じている。
 しかし、おそらく、モンテにとって本当の課題は、真の意味で、この「エレベーター」クラブになることだと思われる。

 ところで、同誌の「プロビンチアの生きる道」という特集は、イマイチ突込みが足りない印象は拭えないが、それでもとても参考になる。
 J1の大分トリニータの苦境の背景にあるものと、J2に降格しながらも確実に地元に定着しているヴァンフォーレ甲府の復活、そして地域活動に対する戦略をしっかり構築して、クラブとしての手本を示す湘南の取組み・・・など。
 とくに、甲府については、興味深い数字が紹介されている。
 J1昇格前年の2005年の平均動員数が6,931人。J1に2年いて、J2に降格した2008年のそれは10,354人。J1を経験したことで、約3,000人観客動員が増えている。
なるほど、今季の甲府は、第33節時点で第3位と昇格争いをしている。

 ついでに言及しておくと、同誌には、Jリーグが今季から「移籍金撤廃」を決めたことに関する特集記事も掲載されている。
 この記事を読むと、Jリーグが、なぜ急に撤廃に舵を切った(ようにみえるか)かがよくわかる。
 移籍金撤廃によって、事業費の規模の差が成績に反映する度合いはさらに高まり、“浪漫”が実を結ぶ可能性はさらにさらに狭まり、モンテをはじめとする“プロビンチア”は、J1で生き残るための戦略・戦術をさらにさらにさらに磨かなければならなくなるだろう。
 これを“面白い”事態だと看做すか、それとも「Jリーグ底辺崩壊の足音」(同誌)と看做すか、その見物もまた面白いことではないか。・・・・あっは。                                                                                                                                                                                                                                                 






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Posted by 高 啓(こうひらく) at 14:59│Comments(0)スポーツ
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