2007年06月06日

杉の美林を見に行く

 山形県最上郡金山町を通りかかった。
 この町は金山杉の産地として有名である。

 金山町には景観条例があり、道路から見える家々が「金山型住宅」という切妻屋根と白壁、杉板張りの建物に統一されている。よくこれだけの民家が協力したものだと思う。

 (詳しくは「街並み(景観)づくり100年運動」を参照。)




 杉の美林というものを見たいと思い、すこしわき道に逸れ、「大美輪(おみのわ)の大杉」
という杉の林を訪ねた。
 樹齢約240年、樹高59メートル、幹の周りが3.45mという巨木群が保存されている。
 深い林ではない、いわゆる里山であるが、その林の感触について旨く言い表すことはできない。
 植林された杉林というものが必ずしも心地よい場所だとは限らないのだ。
 ここの杉たちは圧倒的な迫力をもって、まるで一帯にシールドを張り巡らしてでもいるかのように、その質感を押し出してくる。

 こういう美林が、日本にはあちこちにある・・・そんなふうになんとなく思い込んでいるが、外国産の大量輸入とそれに伴う国産木材価格の大幅な下落で、林業経営は極めて成り立ちにくくなり、管理放棄される森林が増えているという。
 森林の荒廃が進み、この日本的景観も危機に瀕しているのだ。








 来た道を帰ろうとして、ふと気づいた。
 里山の手前の農地に菜の花が咲いている。後ろの黒々とした杉林と美しいコントラストを構成している。
 だが、作付けしたというには生え方が疎で、水田からの転作で菜種を植えてあるという様子では、どうもない。休耕のまま、耕作放棄されているように見える。

 少子高齢化と過疎、地域社会崩壊の足音・・・おそらくは、それがこの美しい風景の裏側に張り付いた意味である。


  

Posted by 高 啓(こうひらく) at 23:57Comments(0)歩く、歩く、歩く、