2014年03月22日
東北芸術工科大学卒業制作展2014 感想その6
次はプロダクトデザイン専攻コースの作品から。
じつは、プロダクトデザインはじぶんがとても楽しみにしている分野である。
いつも時間が足りなくなっていい加減な見方しかできないのが残念だが、印象にのこった作品を紹介しておきたい。

梅村卓実「木製振子時計」
「gismo」と名づけられた木製の大きな振子時計。内部の歯車などの機構も木製で、その複雑な工作に目を見張らされる。
完成品の横に内部機構の仕組みを見せる部分的な作品が展示され、作者が実演しながら解説していた。たとえば、時報は金属の球がその時刻の数だけ鐘に当たって鳴らすのだが、その数と間合いを計るための仕分けの仕組み、そして一度落ちた球を再度上に上げる仕組みなどに興味を引かれた。
この機構が作者自身の発想から生み出され、この作品が作者自身の手でデザインされ組み立てられたとすれば、この作者は学生にしてすでに大変なエンジニアであり、優秀なクラフトマンでもあるだろう。

木屋彰「AirRing」
一言で言うと、丸いワッカ型のスピーカーである。
ちょうどダイソン社のエアマルチプライアー(縦長のワッカ型で羽根のない扇風機)を想像し、そのワッカが円形になっているような物体を思い浮かべて欲しい。このスピーカーは東北パイオニア社からすでに製品化されているとのこと。展示会場で実際に音も聴くことができたが、まさに何もないように思われる空間から音が生まれて、それが周囲に広がっていく感覚が新鮮だった。(ただし、音質と音量が十分なものかどうかは会場では判別できなかった。)

鈴木天明「Feel Motion OLED」
パネル状のLED照明器具が3個ずつ1組で3組、壁に設置されている。手元のダイヤル型のチャンネルを回したり押したりすると、その操作に反応してLED照明の形態や色が変化する。つまりロボットの手(または植物の花弁)が開くような感じで開いたり、照度や色彩が穏やかに変化したりする。変化する照明機器と変化させるダイヤル型の操作端末の双方が、品格を持ったデザイン作品として成立している。

遠藤和輝「Luce(ルーチェ)」
これもLEDの照明器具。数センチ四方のブロック型の照明が、枝分かれしたポールに磁石で張り付いている。各ブロックは付け外しが自由自在にできるので、ポールのどこに何個付けるか自由にアレンジできる。小電力で発光するLEDの長所を、スタイリッシュなデザインに活かしている。卓上の洒落たインテリアという感じである。

後藤彩「スロウリー」
プラスチックか塩ビか、そんな素材で作られた球が、卓上型のスロープの上を転がっていく。
しかし、その転がり方がじつにゆっくりで、40~50センチくらいの長さの坂を1~5分かけて行くのである。要するに砂時計の「球転がし版」といったところである。球の中には粘度の高い液体と丸い錘が入っているという。
機能としては何か作業をする際に利用するタイマーであるのに、インテリアとしてじっと見つめていてしまいそうな感じがする。そう、これは、じっと見つめることで自分の中の時間の流れを可視化する装置なのだ。・・・そう思うと、なんだか見つめているのが恐くなる。

高野拓美「STEUP」
バッテリーをカセット化した電動バイクのデザイン。たとえば、走行距離が少ないバイクの初心者はカセット型のバッテリーを1個搭載した形で、中級者はバッテリーを2個、上級者は3個搭載した形になるというもの。使用の仕方の変化に応じてバッテリーが増減し、バッテリーの増減に応じてバイクのデザインが変化する。そこがこの作品のミソである。

宍戸貴紀「経験する音」
四角い枠に張られた布を押すと、圧迫を受けた部分がほのかに光り、その押し方に応じて音が変化する。押す強さで音の大きさが変化し、押す場所で音色が変化する。
音楽やダンスのライブ・パフォーマンスなどで使うと、面白い効果を生み出しそうである。
プロダクトデザイン専攻コースの作品は総じてうまく纏められており、どの作者も真面目にデザインに取り組んでいるという印象を受けた。
次回(最終回)は、企画構想コースの作品について触れる。
じつは、プロダクトデザインはじぶんがとても楽しみにしている分野である。
いつも時間が足りなくなっていい加減な見方しかできないのが残念だが、印象にのこった作品を紹介しておきたい。

梅村卓実「木製振子時計」
「gismo」と名づけられた木製の大きな振子時計。内部の歯車などの機構も木製で、その複雑な工作に目を見張らされる。
完成品の横に内部機構の仕組みを見せる部分的な作品が展示され、作者が実演しながら解説していた。たとえば、時報は金属の球がその時刻の数だけ鐘に当たって鳴らすのだが、その数と間合いを計るための仕分けの仕組み、そして一度落ちた球を再度上に上げる仕組みなどに興味を引かれた。
この機構が作者自身の発想から生み出され、この作品が作者自身の手でデザインされ組み立てられたとすれば、この作者は学生にしてすでに大変なエンジニアであり、優秀なクラフトマンでもあるだろう。

木屋彰「AirRing」
一言で言うと、丸いワッカ型のスピーカーである。
ちょうどダイソン社のエアマルチプライアー(縦長のワッカ型で羽根のない扇風機)を想像し、そのワッカが円形になっているような物体を思い浮かべて欲しい。このスピーカーは東北パイオニア社からすでに製品化されているとのこと。展示会場で実際に音も聴くことができたが、まさに何もないように思われる空間から音が生まれて、それが周囲に広がっていく感覚が新鮮だった。(ただし、音質と音量が十分なものかどうかは会場では判別できなかった。)

鈴木天明「Feel Motion OLED」
パネル状のLED照明器具が3個ずつ1組で3組、壁に設置されている。手元のダイヤル型のチャンネルを回したり押したりすると、その操作に反応してLED照明の形態や色が変化する。つまりロボットの手(または植物の花弁)が開くような感じで開いたり、照度や色彩が穏やかに変化したりする。変化する照明機器と変化させるダイヤル型の操作端末の双方が、品格を持ったデザイン作品として成立している。

遠藤和輝「Luce(ルーチェ)」
これもLEDの照明器具。数センチ四方のブロック型の照明が、枝分かれしたポールに磁石で張り付いている。各ブロックは付け外しが自由自在にできるので、ポールのどこに何個付けるか自由にアレンジできる。小電力で発光するLEDの長所を、スタイリッシュなデザインに活かしている。卓上の洒落たインテリアという感じである。

後藤彩「スロウリー」
プラスチックか塩ビか、そんな素材で作られた球が、卓上型のスロープの上を転がっていく。
しかし、その転がり方がじつにゆっくりで、40~50センチくらいの長さの坂を1~5分かけて行くのである。要するに砂時計の「球転がし版」といったところである。球の中には粘度の高い液体と丸い錘が入っているという。
機能としては何か作業をする際に利用するタイマーであるのに、インテリアとしてじっと見つめていてしまいそうな感じがする。そう、これは、じっと見つめることで自分の中の時間の流れを可視化する装置なのだ。・・・そう思うと、なんだか見つめているのが恐くなる。

高野拓美「STEUP」
バッテリーをカセット化した電動バイクのデザイン。たとえば、走行距離が少ないバイクの初心者はカセット型のバッテリーを1個搭載した形で、中級者はバッテリーを2個、上級者は3個搭載した形になるというもの。使用の仕方の変化に応じてバッテリーが増減し、バッテリーの増減に応じてバイクのデザインが変化する。そこがこの作品のミソである。

宍戸貴紀「経験する音」
四角い枠に張られた布を押すと、圧迫を受けた部分がほのかに光り、その押し方に応じて音が変化する。押す強さで音の大きさが変化し、押す場所で音色が変化する。
音楽やダンスのライブ・パフォーマンスなどで使うと、面白い効果を生み出しそうである。
プロダクトデザイン専攻コースの作品は総じてうまく纏められており、どの作者も真面目にデザインに取り組んでいるという印象を受けた。
次回(最終回)は、企画構想コースの作品について触れる。
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Posted by 高 啓(こうひらく) at 10:49│Comments(0)
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