2014年03月11日

東北芸術工科大学卒業制作展2014 感想その4


次は総合芸術コースの作品から。







 本川穂乃香「淘汰」
 シャム双生児を連想させる、腰から下がひとつの二体(?)の女の子の人形。二体が結合して生成されたことで、どちらかが(たぶん銀髪の方が)淘汰されているということだろうか。
 だが、見方を変えると、銀髪の人形の背中から、あのヘビ花火(蛇玉)のようにモリモリと金髪の人形がせり出してきたようにも見えるし、銀髪の人形が脱皮をして背中から金髪の人形が出てきたのだというようにも見える。照明の当て方がこの作品のミソになっている。




















 大場麻由「メグリズム」
 コンパネのような版木を合わせて6面柱として建てている。一つの角から2面ずつ見えるので、2面で1シーン、全部で6シーンの絵画作品になっている。また、版木の穴から中を覗くと、内部は何か動物の巣のようになっている。
 木版画に描かれているのはタイトルどおり生の輪廻(それも阿鼻叫喚の世界)の絵巻といったところだが、いくつもの物語が絡めて展開されている。首に鎖を掛けられた男。その鎖は結婚式で並んだカップルに繋がり、またそれは苦しむ裸の女の手首へ繋がれている。その女の腹の穴からは中の巣が覗けるが、巣の中は空である。その巣は猫の餌食になった鳩のものだったかもしれない。
女のヴァギナの口から、臍の緒を付けた嬰児が出ている。一方にはゴキブリやゲジゲジやクモに襲われて助けを求める子どもがおり、それを嘲って笑う口々が踊っている。鳩を咥えた巨大な猫の背景には死体の山があり、山の頂には光を放つ灯台のようなものがある。その頂を目指して山を登る人間がいる。
 作風から、なんとなく「週刊少年サンデー」に連載されたジョージ秋山の「銭ゲバ」を連想してしまうが、それを差し引いても、なかなか野心的な作品として存在感を放っている。







 藤本啓行「MY 2FACES(1(BONE)、2(FACE))」
 自分の顔の向かい合ったシルエットを逆さにして「自分の顔をレビンの盃のように向かい合わせれば自己を見つめるイメージが表せる。それを反転させたものを対峙させれば2つの世界が表現できると思った。」というコメントが付されている。作者によれば、2つの世界とは陰(ネガ)と陽(ポジ)であり、この2つが世界をダイナミックに動かす。この2つの作品は、世界と自己をつなぐエナジーを描いているという。(ここに掲載した画像は一方の作品のみ)
 この作者の問題意識は「オリジナリティがない」ということだったというが、このような世界についての幻想(あるいは信念)で作品を制作するとすれば、<自己>というものが自立する(つまり自己が疎外される)前に、すでに“世界と自己とをつなぐエナジー”に貫流されてしまっている、という事態にはまる。
 作者は「レビンの盃」を描いているつもりでいるが、じつは“世界と自己とをつなぐエナジー”の存在を<無意識>に探し求めて、ロールシャッハ・テストを自作自演しているのかもしれない。



 ここから工芸コースの作品。






 五月女晴佳「そらまめ」(漆、麻布、洋金粉)
 黒い漆の質感と少し錆びた金色のファスナーの取り合わせが絶妙である。空けられた口に活けられている苔や桃色の一輪花はどうも実物のようだ。この組合せのデザインには唸ってしまった。






 五月女晴佳「錦鯉」(漆、麻布、プラチナ箔、黒見箔)
 上記と同じ作者の作品。内側の朱色の漆の色と鯉の形態や質感の組合せが、こちらも絶妙。
 いや、それ以前に、ここにある、欠損し、僅かに胴体の外形を残すばかりとなったものこそ、まさに錦鯉の存在感だという提示に、なぜかひどく同意してしまう。







 門馬加奈「ネコハウス」
 猫をテーマとした「シリーズ工芸」といった感じの作品が並んでいる。漆、麻布、岩絵具で多様な表現を追及している。じぶんは猫好きではないからこれらの作品の形態にあまり興味はないが、猫好きの人間にはこの「ネコハウス」に展示された作品たちは魅力的に映るだろう。その種の人間たちをターゲットにした作品づくり、つまり売れそうな作品を制作するということを意識しているのかもしれない。それはある意味で大事なことだ。
 掲載した画像は「決意の背中 お菊さん」と題された猫のオブジェ。「お菊さん」が「決意」して、ひと肌脱いで、背中の菊の模様の彫り物を見せている・・・と、こんな感じだろうか。しかし、でっぷりした体型と無機的な顔つきがこの作品に陰影を与えている。どこかで猫好きにウケることを拒み、かろうじて<工芸>の矜持を保存しているような感じも受ける。



 この回の最後に、テキスタイル専攻コースの作品をひとつだけ紹介する。






 伊藤早樹子「ヒッキー山荘」(ミクストメディア)
  「テキスタイル」専攻の枠を突破した大胆なオブジェである。
 ポリエチレン製の樽には「熟成中」と記載があり、さらに「開封済」とか「開封不可」とか、黒のマジックインキでメモされている。なんだかちょっと饐えた味噌の臭いがしてきそうだ。
 中央の高いところは、冬の雪山(あるいは氷山)が布団を纏っているような造形。その上に吊るされた赤ん坊をあやすピンクのガラガラが、なんとも旨くチープ感を演出している。外辺に置かれているのは、果物や菓子、ぼた餅、そして玩具など。まるで田舎の老婆が仏壇に上げた供物と、その家の孫が散らかした玩具だというような既視感を放ってくる。また、円盤の下から伸びたタコ足の先には、光る電球がある。このタコ足を持つことによって、記憶の現前がインベーダーの如く観る者を侵犯してくるようだ。
 「いつか持っていた形成途上のあたまが、足りないモノを、さも足りているかのごとく建てたのだった。」とコメントが付されている。

 
 次回は、映像関係の作品について取り上げる。


                    


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Posted by 高 啓(こうひらく) at 00:41│Comments(0)美術展
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