2007年05月02日
ブナの森を歩く

新宿の雑踏を歩いた次の日、山形に戻り、月山の麓の県立自然博物園を訪れ、インタープリターの案内でブナの森を歩いた。
このあたりは標高900メートル。約5メートルの積雪があるという。
この季節でもまだ2メートル近い積雪が残っている。
積雪の圧倒的な圧力に耐え、ブナはたくましく育つ。
ブナの寿命は樹木としては比較的短命で、約200年から250年だそうだ。
月山の麓にはブナの豊かな天然林が広がっている。もうすぐ開花の季節だという。
兎の糞があちこちに落ちている。ブナの表皮や芽を食べている。糞はおが屑のようでほとんど臭わない。

ブナの中には、このようにのた打ち回って育つ木もある。
積雪の関係で枝が下に引っ張られ、捻じ曲げられてしまう。だが、植林されたアカマツなどが枝折れしてしまうのと比べ、ブナは極めてしなやかで、積雪の圧力の中をかいくぐるように枝を伸ばしていく。

ブナの枝にはヤドリギが取り付く。
ヤドリギの実は鳥の餌となり、糞として別の木の梢に付けられ、広がっていく。
そのヤドリギに寄生されたせいなのか、ブナの梢には拳骨のように瘤ができている。
これはブナが瘤を作ってヤドリギを退治しているという見方もできるという。

ブナの森から姥ヶ岳を望む。
この写真では判別できないが、肉眼では山の雪面にかろうじて蟻のような人影が見えた。
月山スキー場のスキー客である。
ここからは月山山頂は見えない。左手に少しだけ写っているのが湯殿山である。
ブナの森には癒される。
だからブナの森で死にたいと思ったことがある。
だが、動物に食われ、蛆虫や昆虫に食われる姿を想像すると、その気もやや萎える。
おれは所詮俗物である。