2011年08月28日
モンテ観照記 2011 「われわれは堪える」
残り試合数が刻々と減少していくなか、モンテディオ山形はなかなか上昇機運に乗り切れない。第23節の清水戦を終えたところで、勝ち点16で降格圏の17位。すぐ上の順位のチームとの得点差を縮めることができないでいる。
第21節から第23節までの試合に触れておきたい。
まず、第21節の8月13日(土)、甲府を迎えたホームゲームで、モンテは久しぶりの勝利を収めた。
この試合の前半、甲府は、ハーフナーマイクやダヴィらのFWやMFがモンテの守備ラインから一斉にディフェンスの裏へタイミングの絶妙な飛び出しを見せ、たびたびモンテのゴールを脅かした。
モンテ守備陣は最初のうちはよく対応していたが、メインスタンドから見ていると、甲府攻撃陣の飛び出しの鮮やかさに「あ〜、これでは点を奪われるのも時間の問題だ・・・」と思わされた。
前半はなんとか無失点で折り返したものの、後半はゴール前での対応力が低下。心配していたことが現実になった。
しかし、1点を先取されたモンテは、今までとは違っていた。これまでは先制されると巻き返す力が出なかったが、この試合ではすぐに追いつき、さらには今季広島から中途移籍(レンタル)したFW山崎がついに覚醒(!)して2得点をあげ、3対1でホームでの久々の勝利をあげた。
先制されても諦めない粘り強さと山崎の活躍が、希望の灯りを点したのだった。
希望を抱きながら乗り込んだ第22節、アウェイの大宮戦。(8月20日)
昨年もそうだったが、降格圏のボーダーラインにいる大宮との対戦は、今季も残留を左右するかなり重要な一戦のはずだった。
ビジター自由席から眺め降ろすサッカー専用のNACK5スタジアム大宮のピッチは、美しい薄緑色に浮き上がっていた。
生憎の雨と今季の低迷からか、モンテのサポーターは昨年より少なかったが、山形に駆けつける大宮サポの数を遥かに上回る山形サポが、今年も大宮に駆けつけた。山形サポの数は1,500〜2,000人くらいかと思われる。
NSBFを標榜するじぶんは、アウェイゲームを観戦するとき、サポーターと少し距離を置くためにビジター自由席の端に座る。このときも最上段の一角に陣取って、まさに“高見の見物”を決め込もうとした。
ゲームの方は、モンテのパッとした展開がないまま、押し込まれながらも前半を無失点で終え、「これがモンテのペースだ」と期待して後半を迎えたのだったが、大宮のFW石原が交代出場すると、その石原にあっという間にゴールを奪われてしまう。
じつは、去年もこうだった。石川のFKでやっと追いついたと思ったら、途中出場したばかりの石原に勝ち越しのゴールを決められて1対2で敗北したのだったから、またあのパターンで負けるのか…とイヤ〜な感じがした。去年の大宮は、リードした途端に 全員の動きが活発になり、モンテは反撃らしい反撃をさせてもらえないまま終わったのだった。
しかし、今年はその再現だけは避けられた。モンテは、太田がゴール前のこぼれ球に反応してすぐに点を取り返した。
この辺りからわれわれ“高見の見物派”も黙って見てはいられなくなり、雨具姿で立ち上って、いつのまにかサポーターとともにチャントを口にしていた。
ここで勝ちきるかどうかが、残留をめぐる大きな分かれ道になる極めて重要なゲームだったのである。
結果は1対1の引き分け。“先制されても諦めないモンテ”の姿勢は根付いてきた。しかし、残留に向けた勝ち点積み上げのうえでは、この局面における引き分けは負けに等しい。残された今季のゲーム数の少なさが重くのしかかってくる。大宮サポに囲まれながら氷川神社参道を歩く駅までの真っ暗な帰路は、来た時よりも遥かに長く感じられたのだった。
ということで、“後が無くなった”モンテは、8月24日(水)の第23節をホームで迎える。相手は、今季アウェイで完敗を喫している清水。
この日、じぶんは「市民応援デー」(山形市ほか対象)による割引チケットで、北バックスタンドに座った。
平日の夜であることと天候が不安定だったことからか、観客の入りは良くない。この日は、ついに7,000人を切ってしまった。・・・ということはどういうことかと言えば、いつもと比べて子どもと子育て世代、それに若者が相対的に少なく、おっさん、おばさんが相対的に多いということである。
こういうときに、北バックの“北バックらしさ”が現れる。たまには、こういう環境での観戦もよし、である。(^^;
ゲームはといえば、前半はモンテが次々にミスをして、はらはらさせられる展開。
モンテがひどい分、小野をはじめとした清水イレヴンのパス回しはなんと美しく、そのボールコントロールのテクニックはなんと高度に見えたことか・・・。
北バックのおっさんたちからは、「モンテ、集中しろよ!」と檄が飛びはじめる。モンテのふがいなさに、その檄は「しっかりやれ!」と、イライラの野次に変わりはじめ、ひどいパスミスに、おばさんたちから自嘲気味の失笑も入る有様である。
この前半は、よく無失点で乗り切れたものだと思わせられるほど、モンテの動きはまったくもってチグハグなものだった。
しかし、後半は事情が変わる。
後半早々、いつものように相手にCKから鮮やかなヘディングシュートを決められたところまでは、まさにいつものような負けパターンだったが、そこから今までにない状況が生まれた。
1点先取した清水は、後衛でボールを回し始め、プレーが途切れると再開に時間かせぎのようなスローモーな動きをする。そこにモンテのサポから抗議の声が上がる。
だが、傍目から見ていると、前半のモンテの攻撃の組み立てがひどいものだから、清水にはこのまま護りきるのかそれとも追加点を取りにいくのか、迷いが生じたように見えた。
それに対して、モンテはボールを奪うと何度も何度も前線にボールを上げ、DFを追い抜いてGKの前に走りこもうと試みる。
そしてついにこの攻撃が成功する瞬間がやってくる。太田が走りながらのヘディングでミドルシュート!・・・それがゴールマウスに飛び込む。
その後は、見違えるようにモンテの動きがよくなり、再三清水ゴールを脅かす。ゴール前でドリブルでGKをかわし、フリーになって決定的なチャンスにシュート!・・・ああ、だが清水のディフェンスがゴール前に走りこんで足でクリア・・・(--;
そして終盤には、モンテのドリブル突進でファウルを誘発し、PK!・・・このとき、われわれは“残留”への希望の灯火が勢いを増して輝かんとしているのを視た・・・はずだったのだが、川島のPKは清水のGKに止められる・・・あぁ(--;、あぁ(--;、
その後もモンテは攻め立てるが、やはりあの“決定力不足”は深刻なのだった。・・・こうして、またも引き分け。
これが残留圏にいるときのゲームなら、われわれは「今日のモンテはよくやった。おしかったなぁ・・・」と帰路に着くのだが、この状況下ではちがう。・・・あの希望の灯火の炎は、さらに弱弱しいものになっているのだった。
しかし、しかし、われわれはまだ堪える。
モンテはいいゲームをするようになった。
パスミスやトラップミスが多く、相手にプレッシャーをかけられると、すぐに通る当てのないロングボールを蹴るという中学生のようなプレースタイルだが、なんだか“これがモンテだ!”という悟り(?)さえもが開けてきた。
この局面における長谷川悠の肉離れによる一次離脱が残念だが、・・・われわれはまだ“奇跡”を信じて堪えるのである。
・・・と、ここまで書いて、NHK-BS「Jリーグタイム」で、27日の第24節、仙台との“みちのくダービー”(ユアテックスタジアム仙台)の結果を知った。
結果は1対2で前回対決に続いて敗北・・・。
仙台の1点目。モンテDFのミスも絡んでいるが、仙台のFW赤嶺のトラップからシュートへの動きが素晴らしかった。
引き続きすぐに仙台にPKを与え、2点目を決められてしまったのが悔やまれる。
・・・と、この結果を知りつつもなお、われわれはまだ“奇跡の奇跡”を信じて堪えるのである。あっは。