2025年03月21日

山形市民会館設計案 修正を求めることの正当性

山形市民会館設計案 修正を求めることの正当性

 山形民会館建て替えにかかる平田設計案に対して、これまで何度も(意見聴取会及び本ブログ及び山形市への意見・提言)修正を要請してきた。
 もう一度、修正を求める正当性について確認しておこう。

(1)「山形市民会館整備事業 要求水準書」 

 これは山形市がプロポーザルに応募する事業者に示したもので、設計案作成にあたっての要件となるものである。
 水準書の「3 諸室・機能に係る基本要件」の「大ホール」の項目にはこうある。

 「市民の文化的な創造活動の発表の場や、優れた舞台芸術の鑑賞の場として、利用者が使用しやすく鑑賞しやすいホールとする。」

 しかし、いまの平田設計案では、大ホールは左右非対称であり、客席後方の半分が調整室の張り出しのために潰されている。市当局は意見聴取会を受けた回答の場で、中心線がわかるように印をつけるとか、後方の半分の凹んだ客席の分は料金を安くするとか、言っているとのことである。
 ステージ及び客席に中心線を明示しなければいけないホール、設計の段階から料金を減免することを想定しなければならない客席があるホール・・・これが「市民の文化的な創造活動の発表の場や、優れた舞台芸術の鑑賞の場として、利用者が使用しやすく鑑賞しやすいホール」に該当するわけがない。
 つまり平田設計案は、水準書が前提とする「基本要件」を満たしていない。
 こういう設計を強行すべきではない。

(2)「事業検討委員会」の要望

 平田設計案を提案したこの事業者(「BIG-TREE」)を当選と決定した審査委員会(「事業検討委員会」)は、その「審査講評」で次のように述べている。
「大ホールは、左右非対称であり特徴的なホール計画となっているため、利用団体等から意見を聞き取り、必要に応じて設計に反映すること。」
 大ホールは「特徴的」なものになっているという控えめな言い方であるが、これは筆者が再三指摘してきたように、公共建築たる文化ホールでは「どこにもない」異常な形態である。これは自称「一流劇場設計者」がどんなに強弁しようとも誤魔化しようのない事実である。
 そして大ホールがこのような形状になっている理由は、設計上の諸室の空間の取り合いで大ホールの優先順位が低く考えられているからである。筆者に言わせれば、ようするに「設計者の都合」からきている。(なぜそうなっているかは本ブログ「山形市民会館設計案 平田設計案の批判」を参照されたい。)
 このことは委員会でもさすがに問題視されていたことがわかる。
 もちろん、「利用団体等」は、修正してまっとうな形状のホールにしてくれと何度も(筆者が知るだけでも3度)要請している。

(3)施主は修正させることに躊躇する必要はない

 先述したように、「プロポーザル方式」の選考では、「設計案」を決めるのではない。「設計者」を決めるのである。
 その核心は、「設計に施主の意見を十分に反映させる」ことにある。
 山形市当局は自分たちが決めたことを事業者に守らせるべきである。
 そしてなにより、今後50年以上も「唯一の大ホール」としてこれを使用していく市民の声を設計者の自己主張や利害に優先させるべきである。
 
 


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Posted by 高 啓(こうひらく) at 10:15│Comments(1)作品評
この記事へのコメント
市は4月12日にもう一度ワークショップを行なうとのことでした。※山形市サイト参照 申し込み要
前回異論を唱えたのでチェックされているとは思いますが、市民の意見を聞く機会とは本来、不備を指摘してもらうという意味もあるので意見を言う人を外さないで欲しいものです。
Posted by ht990 at 2025年03月22日 21:05
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