2007年09月19日

きょうは詩人8号

 
 伊藤啓子さんから、「きょうは詩人」8号(アトリエ夢人館)が送られてきた。
7人の同人(全員が女性のようだ)の作品と、各号でお題(この号は「占い」)をきめて各同人が寄せるエッセイが掲載されている。

 伊藤啓子「機屋の八月」、吉井淑「山吹」、鈴木芳子「公園で」、赤地ヒロ子「睦月」、小柳玲子「梅雨の家」と、7人のうち5人までが、死人または亡霊のようなものが訪れる詩を寄せている。
 この女性詩人たちは、幽玄のまどろみの世界に棲んでいるかのようだ。

 しかし、すいぶんと気が合うものだ。まさか詩までお題を決めていたわけではないだろう。
 ふと考えてしまったのだが、この人たちはなぜ女性だけの同人誌を発行しているのだろう。その理由はよくわかないが、このように女性たちだけの詩誌であることは、一定の水準を維持できればそれなりにインパクトをもつのかもしれない。
 それは、詩誌、つまりは詩作品がより注目を浴びるためのひとつの戦術でもあるだろう。
 しかし、ちょっと捻くれた見方をすれば、女が女の集団を売りものにしていると見られないこともない。微妙なところでもある。

 巻頭の伊藤啓子「機屋の八月」には、路地のところどころから聞こえてくる機織の音が描かれている。たぶん米沢市の米織(よねおり)の情景ではないかと思う。
 昔、米沢市に山形県立米沢高等技術専門校という職業能力開発校があって、そこに繊維工学科という名称の離転職者向けの職業訓練課程があったのを思い出す。たしか6ヶ月間で糸を紡ぐところから染色、そして機織りまでを実習する課程だった。
 地場産業である米織業界からの求人はほとんどなくなって、いまから十数年前に繊維工学科が廃止され、やがて米沢高等技術専門校自体も廃止されたが、この学科があるころは授業料無料で基礎から機織りが学べると、全国から入校生がやって来ていたものだ。再編合理化でまっさきに廃止されたのだったが、あの実習の風景が目に浮かぶ。
  

Posted by 高 啓(こうひらく) at 19:25Comments(0)作品評