2014年04月17日

東北芸術工科大学卒業制作展2014 感想その7



 最後に企画構想専攻コースの作品から。

 東北芸術工科大学では、既存のデザイン工学部「企画構想学科」(学科長:小山薫堂氏)に加えて、2014年度から同学部に「コミュニティデザイン学科」(学科長:山崎亮氏)が新設される
 前者は小山氏の会社(一言でいえば広告代理店)、後者は山崎氏の会社(一言でいえば環境設計事務所)がそのままこの大学の学科になったような印象であるが、対象領域がけっこう重なる両学科が、それぞれの特徴を活かしつつ、どんな活動をしていくのか注目していきたい。
 というわけで、2014年度の企画構想学科の卒業研究作品の一部には、2015年度であればコミュニティデザイン学科のそれ、という感じのものもあった。






 大越智明「サケ×アテ グランプリ2013」
 農林水産省主催の企画コンクールで採択され、同省の予算で実施されたイベントの企画である。
 全国各地の8大学の大学生が、その地元の代表となる日本酒の銘柄とその日本酒に合った郷土料理の肴(酒のアテ)の組合せを提案し、そのプレゼンの全国コンクールを実施して「グランプリ」の「サケ×アテ」を選出するというもの。
 ただの日本酒の品評会では面白くないから、肴との組合せで品評しようという発想は評価できるが、提案者が各大学(当該大学の一部学生ら)というところが微妙である。
 これをもし一般募集でやったら商売が絡んでいただけないものになりそうだから、「純粋な」大学生に評価・提案させるという方法をとったのだろうが、捻くれ者のじぶんなどは「大学生に酒の銘柄と肴を指図されるほど落ちぶれちゃあいねぇ」な~んて偉そうなことを言いそうになる。
ところで、たとえば山形大学チーム(農学部か?)の推奨は「初孫生もと純米酒」×「玉こんにゃく田楽味噌」だった。「初孫」はじぶんも好きな地酒で(ただし純米酒じゃなく醸造用アルコールが入っている方がいい)、蔵元は酒田だから、「田楽味噌」がアテと聞けば、これは雪の中で「黒森歌舞伎」を観ながらいただくようなイメージだ。(・・・遠い昔、20代のころ、その雪中歌舞伎を観に酒田市黒森に出かけたことがあった。アテはこんにゃくではなく焼き豆腐だったような気がするが、一升瓶をそのまま大きな鍋でお燗して振舞われた地酒の味は忘れられない。)



 國井理紗「人あたたまる、ヤマガタミュージック」
 山形出身または山形で活動しているミュージシャンによる「山形の音楽・山形の人とふれあえる」ミニ・ライヴの企画。展示は「企画書」という形。ライヴの会場は芸工大の学生らによる「蔵プロジェクト」でカフェバーとして再生された「蔵オビハチ」。
 「蔵オビハチ」は、じぶんたちが2012年に第1回の「山形詩人ミーティング」を開催した場所でもある。このライヴ・イベントは観ていないが、たぶんいい雰囲気のライヴ&トークになったことだろう。パブリシティとして地元ラジオで情報提供したり、フライヤー等をデザインして、作者が一生懸命宣伝しているところも事前に見聞きしていた。
 ところで、企画構想学科では、学科の企画として山形県西川町海味(かいしゅう)の廃校になった西山小学校の校舎を会場として2012年から「月山青春音楽祭」を開催している。こういう経験を踏まえての卒業研究だと思うから、勝手な言い方をすれば、仲間とともに「蔵王龍岩祭」とか、今は亡き映画館「旭座」で開催されたあの伝説的ライヴ・イベント「DO IT」くらいのデカイ企画にチャレンジしてもらいたい。

 余談だが、第2回の山形詩人ミーティングを、「山形詩人ミーティング2014 in 新庄」と題して、2014年3月28日(土)に、山形県新庄市の「ニューグランドホテル新庄」で開催した。今回は、近江正人の『新・日本現代詩文庫 近江正人詩集』(土曜美術社出版販売)と万理小路譲の評論集『詩というテキストⅡ』(書肆犀)をネタに、酒肴をいただきながら自由に議論するという企画だった。
 そのうち、これイベントの記事もアップしたい。
 なお、念のため申し添えておくと、「山形詩人ミーティング」は「同人誌『山形詩人』のミーティング」という意味ではなく、「山形の詩人のミーティング」という意味である。(なお、詩人でない方も参加している。)



 澤邊元太「The nipple fight 山形」
 男が二人向かい合って、お互いの乳首を糸で結び合い“乳首綱引き”をする。そのトーナメント戦のイベント企画である。展示は、実際に開催したイベントの模様を撮影したDVDの上映という形でされていた。
 じぶんは痛そうであまり直視していられないが、スポンサーも獲得し、出場者数もしっかり確保していて、イベントとしては成功しているように見えた。出場者たちが、ウケ狙いではなく勝敗に拘って試合に臨んでいる姿が面白い。この企画が作者や作者周辺の個人の既存の人間関係にどれだけ依存していたのかはわからないが、このような企画がほんとうに世の中に出て行くためには、個人的な繋がりの範囲を超えたいわゆるマーケティングが不可欠だろう。その開拓過程こそが卒業研究として評価されるべきものだ。



 齋藤りん「taks ~ストーリーで伝える古着の価値~」
 古着屋で古着を売るにあたって、その前の持ち主の服にまつわるストーリーをタグなどに記して、それを付して売るという提案。
 「面白い発想だな・・・」と漠然と思って通り過ぎるが、あとで振り返って考えてみると、こういうものを実際に買うとしたらなかなか複雑な想いがするだろうな、寧ろ嫌な感じがして他人の古着にあまり縁がないじぶんはますます買わないかな・・・などと考えてしまった。
 古着にあまり縁がないというのは、古着屋の店頭にあるときは良さそうに見えて購入しても、結局それをほとんど着ないでしまうからである。端的に言えばじぶんには古着の着こなし術がないからだということになるが、それにしてもストーリーまで付されていたらますます気後れしそうである。
 作者は「ストーリー」つまり他人の人生が面白そうだということでこういう提案をしているのだろうから、その若者らしい好奇心と屈託の無さに好感を持つのではあるが、他人のストーリーに興味があるかどうかと、その人が着ていたものに袖を通すかどうかはまた別の問題のような気がする。



 佐藤直哉「まってる。~あなたは何をまってますか?~」
 さまざまなものや人を“待っている人”を取材した写真とそれに説明やコメントを付した展示。
うまいことを考えたなぁと思い、さらにはそこに写真が掲げられた“待っている人”を見つめてしまうのだが、気づくと、帰ってこない人を待つという行為ほど切ないものはない。「あなたのまっている人に、想いを伝えるきっかけを届けます。」というコメントが付けられているが、想いを伝えることができないから“待っている”のではないだろうか。少なくとも、“待っている人”には、自分の想いを相手に伝えることができない状況にある人の方が多いような気がする。








 以上のほか、企画構想学科の小山薫堂学科長、軽部政治教授らが、「UHA味覚糖」の山田泰正社長を招いたディスカッションも聴講した。
 これは同社の商品であるキャンディ「特濃ミルク」を基にした新商品(「特恋ミルク」)の開発を同学科が受託して、学生の演習として商品開発から店舗マーケティングまでを行った事例の紹介と振り返りの話だった。
 山田社長によれば、キャンディ類は500~600社が販売しており、そのなかでコンビニの棚に並べてもらえるのはほんの2~3種類だという。この種の商品は1店舗で1週間に5袋売れればヒット商品だとのことで、売れ行き1位は「春日井の黒あめ」(個数は聞き取れず)、2位は「キシリクリスタル」で12.3個、3位「森永」(商品名と個数を聞き取れず)、4位「特濃ミルク」9.5個だという。(個数は1店舗あたり1週間の売り上げ数)
このなかで、山形県のスーパー「ヤマザワ」で販売された「特恋ミルク」は1日20.1個という「化け物的な売り上げ」を記録したため、局地的な売り上げではあるが、この1店舗あたりの売上数量は無視できないとなって全国販売することにしたという。
 ちなみに、同社は年商260億円で、新規採用者の募集には4万人がエントリーシートを送ってくる人気企業だそうである。
 「特恋ミルク」プロジェクトの成功を受けて、山田社長は、同社の「HAPPY DATES」という菓子を基にした新商品の開発から店舗マーケティング、CM製作までを同学科に委託すると表明した。



 2014年春の東北芸工大卒展感想の記載はこれで終わり。
 来年度は、映像学科の映画作品や環境デザイン学科関係の作品もじっくり見たいものだ・・・と希いつつ擱筆する。

                                                                                                                                                                  



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Posted by 高 啓(こうひらく) at 00:59│Comments(0)美術展
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