2010年11月28日
モンテぶらから観照記 その6 残留決定
結局、今年もモンテは残留争いに巻き込まれた。
第31節、アウェイで相性のいいジュビロ磐田と対戦するも0対0で引き分け。ここで大宮に追い越されてモンテは14位となった。残りのゲームは、32節がホームで京都と、33節がアウェイで東京と、そして34節の最終戦がホームで鹿島との対戦となっていた。32節で京都に敗れると自力での残留決定はなくなり、33節では残留をかけて東京と闘うことになってしまう。しかも、最終節は強敵の鹿島であることから、32節の京都戦で勝ち点3を取ることがモンテにとっての至上命題だった。
ここまでのモンテには、11月14日にホームで第30節セレッソ大阪戦、17日にアウェイで天皇杯4回戦の川崎フロンターレ戦、20日に31節のジュビロ磐田戦、そして23日の京都戦と、中二日のきびしい日程が続いていた。
ところで、11月23日(勤労感謝の日)の京都戦は、寒さが身にしみる季節でありながら、試合開始がなんと19:30。
次の日が平日であることから、試合終了後の帰宅時間を考えると、子ども連れでの観戦は無理。大人だけでも遠方からの観戦には二の足を踏む。今節は、なぜモンテの試合だけがこんな遅い開始時刻なのか・・・スカパーなどのテレビ中継の都合か?・・と、恨み節も出るが、しかし、この重大なゲームを見過ごすことはできない。“いざ天童!”という気持ちで出かけた。(笑)
クラブ側もこの節が重要であることを意識し、観客動員の仕掛けをしてはいた。「県民応援デー」として、ビジター席を除き、メインスタンド自由席を含む自由席を前売り1,500円均一で県民に提供したのである。(動員については、後で触れる。)
一方、サポーター有志は、一部のスポンサーに掛け合い、観客向けにビニールのビブスを配布。レプリカのユニホームやモンテのチームカラーのシャツなどを着ていない観客も含め、観客席をモンテブルーに染めようと取り組んだ。
ゲームの入り方としては、モンテの選手たちは、疲れの蓄積(?)と、残留を決める上でのこのゲームがきわめて重要であることによる緊張からか、どこか動きが硬いような印象だった。
京都とモンテが相互に攻め合うが、ボールコントロールなどの個人的技術は、京都の方が勝っているように見える。しかし、京都はボールを奪ったあとの攻め上がりがどうもちぐはぐしていて、モンテがボールを奪い返すシーンが何度もあった。
前半を0−0で終了。後半6分過ぎ、石川のサイドからのクロスに田代がヘディングを合わせて1点を先取し、モンテはその1点を守って逃げ切った。モンテ・イレブンからは、セレッソ大阪戦の反省を踏まえ、しっかりと守りきる・・・という意識が伝わってきた。
試合終了と同時に、サポーター席と観客席は残留決定の歓喜に沸いた。
・・・ああ、これで来年もJ1のモンテを観ることができる・・・感慨もひとしおである・・・と、単純に喜びたいところなのであるが・・・
さて、だがしかし、この日の観客動員数は8,582人。これだけの天王山で、1万人を下回っているのは、いかに季節と試合時刻がネックになっているとしても、真剣に考えなければならない課題だろう。
客席を見回すと、確かにモンテの試合をしっかり観戦している客が増えたように思える。
じぶんはメインスタンド南の自由席(地元ファンはメインスタンド北から席を取るので、ビジター席に近い南席の観客は、北席に比べるとコアなファンではないような印象)にいる場合が多いが、そこで聞こえてくる会話にそれとなく耳を傾けていると、残留争いでチームがどんな状況に置かれているか、他のチームの今節の勝敗はどうか、今日のスターティング・メンバーはどうか、それは各メンバーのどんな状況を反映したものか・・・などなど、それなりにチェックして観戦している人が増えた感じがする。
そういう意味では、観客総体として、ゲームを観る目が肥えてきている。しかし、その一方で、昨季と比べて、モンテのファンとそうでない観客の間に、見えない区分線が引かれてきているという漠然とした印象も受けている。
つまり、相手チームが人気のあるチームなのか(というよりも相手チームにナショナルチームで活躍するスター選手がいるかどうか)や天候がいいかどうかに左右される“薄い”ファンの層との間が乖離してきているという感じである。
クラブにとって好ましいのは、コアなサポーター層があり、コアな観客(じぶんのようなNSBFなど)がいて、そこから薄い観客までの間がグラデーション状に連続しているという状態ではないか。
すると、セレッソ戦の7,712人を比較的コアなサポ及びファンと仮定し、“ここが残留できるかどうかの天王山です。ぜひスタジアムで声援を!”と呼びかけて集まったのが、8,525人−7,712人=813人だと考えたとき、このグラデーションの帯域は、かなりやせ細っているということになる。
今回、京都戦がどんなに重要なゲームであるかについて、クラブが必死になって宣伝したという感じではなかった。昨年、J1に昇格したばかりのモンテのファンたちが、浦和や鹿島とのホームゲームで、相手サポがどれだけ多数押しかけるのか知らないため相手サポにチケットを買い占められそうになったとき、クラブが大慌てで呼びかけて地元観客を動員したことがあったが、そんな場合と、今回のように残留がかかった必死のゲームに地元ファンを動員するのとでは訳が違う。
残留か、さもなくば降格か、天と地ほどの差がある道行きが決まるギリギリの場面で、そのゲームに立ち会う地元ファンをどれだけ得られるか、クラブ(社団法人)の命運はそこにかかっているのだ。前理事長の海保氏なら、こういうところが広報の全力を傾けるべき勘所だと、チケット料金値引き以外にも動員方策を打ったような気がする。クラブのフロントは、今季の観客動員について謙虚に総括を行い、J1に定着するために何をしなければならないか、あらためて戦略を構築する必要があるだろう。
さて、33節のFC東京戦は、「ナナ・ビーンズ」(山形市七日町にある元「丸久松坂屋デパート」の建物を転用した複合施設)の8階にある「スポーツプラザ21」に出かけて、じぶんとしては初めて「パブリック・ビューイング」というにやつに参加した。
この会場は、アルコールを含めて飲食自由なところがとてもいい。マナーを守り、この自由さが失われないように心がけたいものだ。
ゲームの方はといえば、残留確保に向けて必死に攻めてくる東京に対し、モンテが対等に渡り合ういい試合だった。スカパーTBSチャンネルでの放映だったが、東京サポの大声援に混じって、山形サポのコールもしっかり聴こえていた。
後半29分過ぎ、東京の平山の振り向きざまのシュートに、モンテのDF西河が反応して足を出したが、これがボールのコースを変化させたため、さすがの清水も防御できずにゴールを許す。これまでのモンテなら、この時間帯に先攻されると追いつけないままズルズルと行くケースが多かったが、得点力不足を乗り越え、最近のセレッソ戦や川崎戦で3点を奪ってきた経験がプラスになって、めげずに速攻を仕掛ける。そして40分過ぎ、宮沢からのクロスに田代が高い位置でヘディングを決め、同点とする。
モンテは最後まで攻める気力を失わず、試合はこのまま終了してドロー。今季不調とはいえ、タレントのそろった東京から、しかもアウェイでの勝ち点1は小さくない。
これで残留争いはほぼ東京と神戸に絞られた。最終節で、たとえ仙台が負け、16位の神戸が勝ち点3をあげたとしても、大量得点をしないかぎり得失点差で仙台には及ばない。仙台の残留も決定といっていいだろう。
次節、すなわち今季最終戦は、12月4日(土)にホームで鹿島を迎え撃つことになる。
昨年まで3連覇のチャンピオンだった鹿島は、現在3位。自力でACL出場権を獲得するためにはモンテに勝つことが不可欠であるから、本気で襲いかかってくるだろう。
“小林やまがた”がこれにどう対応するのか、とても楽しみである。
最後に、京都のサポーター諸君、遠いところお疲れさまでした。
試合後に挨拶に行った選手たちにどんな言葉をかけていたのか・・・。いつかモンテにもこんな日がやってくるだろう。そんな気持ちでこの写真の風景を眺めていた・・・じつは、昨年もそんな気持ちで、NDスタに駆けつけた大分のサポたちを見ていたのだった。(当時も大分の降格は決定的だった。)
こんなとき、どんな言葉をかけられるかによってサポの真価が決まる。モンテ・サポも、そしてわれわれNSBFも、つねにそのことを意識しておくべきだろう。
来年もまたJ1の東北ダービーが観られる。これは幸せなことである。・・・あっは。