2008年06月18日

ブナの森を歩く 2

 6月の初め、月山山麓の山形県立自然博物園を訪れ、インタープリターに案内されてネイチャートレイルのコースを歩いた。
 昨年の5月にもここを訪れているが、そのときはまだ2メートル以上の残雪があった。
 思えば、5月の初めにはこの6月に地面を歩いているじぶんの頭よりも高い位置、つまりは空中を歩いていたことになる。
 この自然博物園のネイチャートレイルのコースにはいくつか種類があるが、今回じぶんが参加したのはもっともポピュラーなもので、一般参加者対象で毎日9:30と13:30の2回出発、各120分程度のブナの森の散策のコースである。(但し月曜日は休み。)







 残雪に埋まった枝先を立ち上げようと突っ張っている低木たちを掻き分けてコースに入ると、すぐに案内人が地面からくるりとまかれた葉っぱを拾って見せてくれた。
 オトシブミが葉っぱを丸めて、その中に産卵したものだ。丸まった形が“落し文”に似ているのでこの名が付いたという。かれらはこれを1個90分程度で造るのだそうだ。
 くるくると巻いた葉の端を、さらに折り曲げてまとめてあるのがなんとも丁寧な仕事だ。感心する。







 ミズナラを見上げながら、タムシバやオオカメノキの白い花、それに鮮やかな濃いピンクのムラサキヤシオツツジ、そしてまだ開ききらないハウチワカエデの花を楽しみながら登っていく。
 すると小さな清流が通った「元玄海」と呼ばれる広場にでる。
 ここにはいくつか石碑がある。昔は祈祷所だったという。
ここに至る少し手前の分かれ道を登っていくとやがて「装束場」を経て、湯殿山の御神体に至る。この山麓は修験の場でもあったのだ。








 月山の湧水で喉を潤し、サワグルミの大木を見上げる。サワグルミは湿地が好きだという。
 ここを過ぎると、ブナの二次林がおわり、やがて原生林に入っていく。
 水溜りで卵のうを見つけた。これはクロサンショウウオのもの。この辺には他にトウホクサンショウウオも棲息している。
 モリアオガエルが産卵にきて、その卵はイモリに食べられてしまったりもするそうだ。








 この博物園のシンボルツリーだというトチの大木を見上げる。
 “大橡のおばあちゃん”と呼ばれている。
 トチというとすぐ橡餅を連想してしまう。1個いただく分には美味しいが、調子にのって2個目を食べると、気持ちが悪くなる・・・  じぶんの場合は、饅頭でもそうなのだが。(苦笑)









 僅かに雪が残ったブナの原生林は静謐だった。
 林の向こうで、アカゲラが縄張りを誇示してドラミングを始めた。
 新緑の梢から差し込む柔らかな光・・・じぶんが煩悩と業の塊であることを、いっときは、忘れた。

 もっと長い間、ここでぼーっとして、救われた気でいたかった。                                                                                                                                                                       
  

Posted by 高 啓(こうひらく) at 00:30Comments(0)歩く、歩く、歩く、